フラスコを振る

某大で研究やってる人の日記です。科学や(自分の専門の)生物をもっと楽しんでもらいたい。Twitterは@nkjmu。

久々に科学ネタを書く

こんにちは、nkjmyです。

 

雑談や日常報告が多く、"最近"あまり書けていなかった"細菌"のネタを書こうかなと。

 

少し前のニュース、論文ではありますが。

 

 本日ご紹介したいのは、こちら。

 

英語で申し訳ない・・・。

 

 

ざっというと、深海に生息するチョウチンアンコウに共生している(発光)細菌のお話です。

 

チョウチンアンコウってみなさん、名前を聞くと、

「ああ、あれね」ってなると思う方が多いと思うんですが、あの発光する部分に共生している細菌は、これまでよくわかっていませんでした。

 

というのも、分離培養しようにも成功していないというのが主な理由。

 

Wikipediaには最早、「培養試験において、発光バクテリアが分離・培養されていないところから、(中略) 発光バクテリア(細菌)の共生によるものではないとみられている」とまで書かれている

(一応、参考文献ものっているが70年代の文献のため情報が古い)

 

追記:ゼミでこの論文の話になった際のrefなどをみてみると、1992, 93年にはチョウチンアンコウの発光が、細菌であることが分かっていたみたいですね

"Polymerase Chain reaction and 16S rRNA gene sequences from the luminous bacterial symbionts of two deep-sea anglerfishes" (Haygood et al., 1992)

"Bioluminescent symbionts of flashlight fishes and deep-sea anglerfishes form unique lineages related to the genus Vibrio" (Haygood et al., 1993)

 

 

さて、遺伝子解析の技術が進歩したことにより、

培養できない細菌でも、遺伝子解析によって、

どういう代謝をしそうなのかとか、どういう遺伝子を持っているのかとか、

もちろん、どういう種に近いのかなどが分かるようになってきました。

 

今まで、このチョウチンアンコウと(光る)細菌との関係性はあまり詳しくはわかっていませんでした。

しかし、この研究のようにゲノム(全遺伝情報)が分かるようになってくると、それらを予測することが可能になってくるわけです。

 

元論文のアブストラクトを中心に結果を見てみます。

 

 

・魚やイカなどは、発光細菌との共生関係を持つことがある。これらは通常、大きなゲノムを持つFree-livingな細菌(1個体で生活している・何か粒子などに付着しているわけではない)

・既知の系統の共生植物では、ゲノムの縮小と宿主依存の進化が見られる。

・多様な発光する生物と共生生物の進化のパターンをより理解するために、チョウチンアンコウとその共生細菌のゲノムを新たに調べた。

 

この辺がイントロになります。

 

チョウチンアンコウに共生している細菌のゲノムは、(海水中に生息している)近縁のFree-livingな細菌と比べて、約50%縮小されていた。

・それらはゲノムの顕著な縮小や代謝能力の喪失を示し、宿主(チョウチンアンコウ)に依存する細菌の系統が明らかになってきた。

代謝能力の喪失については、アミノ酸合成経路や多様な糖を利用する能力を失っていそう。

・しかし、共生細菌のゲノムは、走化性(ある化学物質に対し+, –の方向で動く)や運動性(例えばべん毛などか)に関わる遺伝子など、宿主の外でのみ有用であると予測される多くの遺伝子を保持していた

 

→これはおそらく、普段は共生関係にあってチョウチンアンコウのところにいたいが、

その個体から別の個体(たとえば子供)に移る際に、どうしても必要なのでは?と考えることができる。

 

・非常に多数の偽遺伝子を含み、トランスポゼースが約3割を占めている。

 

トランスポゼースとは、トランスポゾンを転移させる(動かす)ためのタンパク質で、

トランスポゾンは、ゲノム中にある、「転移DNA」の部分です。

(あんまり説明による情報の追加が行われていない気がするのは気のせい)

 

DNA(ゲノム)上の、とある部分を、別の部分に切りはりして移すことができる 

訳です。

 

そのような「形跡」がたくさんあるとのことですが、

論文中では、ちゃんと働きそうかどうかという点で、700〜900弱あるトランスポゼース様配列は、「すべてNO(働かない)」だろうと表に載っています。

 

これは、比較的近い過去において、使い終わったのではないかと。

 

このあと、もういらない部分については選択されゲノム中からなくなり、

その最終的なゴールとして、ヒカリキンメに共生する様な細菌(ゲノムサイズが1.0~1.1Mbp)まで小さくなるのではないかということです。

 

普通の自由生活性の近縁種が4~6Mbpのゲノムサイズで、

 

チョウチンアンコウがその約半分(2.0〜2.6)、

しかし、もういらない、使われなさそうな配列がたくさんあり、

すでに代謝などの遺伝子は本当に必要最低限で、

ここから抜け落ちると、1Mbp前後まで縮小できるのかもしれませんね。

 

実際のデータを見ても、

明らかに両者の差はトランスポゾンに関係する遺伝子の数が全然違う。

 

タイトルがOngoing Transposon-Mediated Genome Reductionとあるので今まさに進んでいる、ゲノム縮小ということが結論といった感じでしょう

 

 

 

でも、思ったのが1.0Mbpって共生にしては大きいんですかね。

 

 同じProteobacteriaの自由生活性細菌Ca. Pelagibacter ubiqueは1.3Mbpくらいのはずですし

 

マイコプラズマをはじめとする、Tenericutes門は共生がほとんどで、

0.58Mbp (Mycoplasma genitalium)とか。

 

細菌最小ゲノムはCa. Carsonella ruddii の約0.16Mbp。

あるいは古細菌で一番小さい共生細菌だと0.49Mbp (Ca. Nanoarchaeum equitans)

 

ヒカリキンメの共生細菌ももっと減らせる?

 

 

ではでは今日はこの辺で

 

 

終わり