今年読んだ一番好きな論文2019大人版
こんばんは、お久しぶりです、nkjmyです。
クリスマスということでプレゼントとはいかないまでも、記事を投稿します。
この記事は、
大人版ということで賞品がないんですが
2年ぶり?に今年一番の論文を紹介しようと思います。
ちょっと先日、別のアドベントカレンダーに投稿していた
ということもあり、時間が足りなかったので、学生として参加していた時のような気合の入ったslide shareではなく、ブログで書きなぐります。
さて、紹介する論文は、
#NewOnline
— Nature Microbiology (@NatureMicrobiol) November 18, 2019
It's a veritable Plactomycetes FESTIVAL@ChristianJogler & cols report genomic, culture & phenotypic characterization of 79 globally distributed strains, shedding light on cell shapes, modes of cell division & signalling & metabolic potentialhttps://t.co/szOiR9009T pic.twitter.com/ailGGIKoC2
こちらのツイートにある論文、"Cultivation and functional characterization of 79 planctomycetes uncovers their unique biology"
https://www.nature.com/articles/s41564-019-0588-1
です。(ツイート内のURLから本文が限定公開で見られますが、基本は有料記事なので、Figなどはブログ内に載せません、悪しからず)
超簡略論文のミソ
・Planctomycetes門に属する細菌を(新種なども含め)79株採ってきてゲノム解析し、その特徴づけを行った。
・Planctomycetesの分裂様式が変
・今まで既知種があまりなかったこともあり、ゲノムの中身を見てもなんか変、すごい
ここが良いポイント
・書き出しが良い!
和訳すると、
細菌における細胞生物、分子遺伝、代謝、感染、応用方面などのキーとなる特徴はProteobacteria, Firmicutes, Actinobacteria, Bacteroidetesの「モデル生物」から得られたものである。80以上の門が認知されるようになっている現在において、そういった知見は細菌を包括して表しているようなものなのだろうか?
・Planctomecetes分離しすぎ!すごい!
分離培養をやったことがない方はあまりイメージできないかもしれませんが、本当に、採れない(もちろんいろんな当該グループを採る工夫をしていないというのはあるけど)。
既知のグループは29属に分けられ、多くが1属1種ということで、つまりは門レベルで数十程度の種しかいない。
それを今回、65の新種(31の新属)分離するという想像を絶するようなPlanctomecetesへの情熱!
あと細かいところかもしれませんが、完全な選択培地というわけではないのに(つまり他の狙っていない分類群の株もめっちゃ沢山採れると予想できる)、
本文中に今回の"全部で採った株の数"を書いてへん!見えてへん努力の部分を書かず、最終的に採れたPlanctomycetesの株数だけを書いているっていうのはいいですね。
(私ならtotal 1500株とってそのうち79株が〜〜って書いちゃいそう・・・)
・Planctomecetesのポテンシャルがすごい!
サプリの図(上記URL参照)がめちゃくちゃ多くて、どんだけ調べんねんというくらい、採れてきたやつらからそのゲノムから予測される生き様、生理を載せている。
これからはPlanctomycetesやろ!と言わんばかり。
本題
さて、PlanctomycetesはVerrucomicrobia, Chlamydiaeとならんで、PVC群という門より上のグループを作っています。Verrucomicrobiaも面白いと思うんですが、今回はPlanctomycetesづくしでいきましょう。
Fig.1とFig. 2はPlanctomycetesの系統樹です。
9002個の16SrRNA遺伝子系統樹とMLSAによる系統樹。
・名前について、赤色が分離した株、黄色がMAG、緑が再シーケンス、黒字が既知の(データベース由来)配列
・クレードの色は、新しい分離株かや、MAGで知られてるか、既知かどうかで分けられている
・円グラフは、どの環境から見つかるか
採取した79株について
・1種の既知種、65の新種にわかれた
・さらに、属レベルでみてみると、知られているものは8つで、31が新属相当
・ゲノムサイズは3.3~11.0で平均は7.2Mbp。幅が広いように見えるが、門の中のクレードごとに特徴がある(らしい)
ゲノムサイズ、3.3Mbpでもそこそこ大きいのでは?と思います。
というのも海洋において普遍的に存在し、自由生活性として知られているPelagibacterと呼ばれるグループは1Mbpちょっとなので。
大腸菌は(めっちゃ幅があるけど)4.7Mbpくらいやけど。
ちなみに、10Mbp超えるのは全細菌を通して比べてみても最大級。
ゲノムの中身について
・Gemmataceae, Isosphaeraceaeについては、翻訳やシグナル伝達系の遺伝子に分けられた割合が高い。
・一方で、IsosphaeraceaeとSaltatorellusクレードは、細胞壁、細胞膜、エンベロープ合成の遺伝子をかなり多くシェアしている。
・40~50%のタンパクが機能未知になるが、巨大なゲノム中(上記参照)でそういったものがどのようなポテンシャルを発揮するのかは謎
Planctomycetesの分裂について
・またまた書き振りがおしゃれやなぁと思ったのが、
Planctomycetes challenge the concepts of bacterial cell division and shape determination.
Planctomycetesはバクテリアの細胞分裂や形状決定のコンセプトに挑戦する
オミックスベースの研究とは対照的に、細胞の形態観察という渋さも同じ論文に載っていて、しかもその様式が実際すごかったというのは良い!
「期待通りに」budding(出芽)で分裂するものが観察された(Fig. 3b I~VI)
って書いてありますし笑。
・一方で、期待を(いい意味で裏切る形で)Kolteria novifiliaという今回の研究で初めてisolateされた株は、これまで知られていないような分裂の仕方を示した。
→「側方出芽」Fig. 3b vii, viii
たしかに見てみると、ほかのものはいわゆる”極”の部分からプツリと出芽しているが、K. novifilaはなんか変。ソラマメの横に小さいソラマメができるみたいな。
さて、この辺りからゲノムベースで「どういう遺伝子を持っているか」からよりPlanctomycetesがいかに変わっているかが記載されているわけですが
ボリュームデカすぎるねん!!!
Fig. S7~S19・・・
そして次のシグナル伝達や二次代謝産物の話が、サプリのFigでS46まで続く・・・
(この辺は、年内に徐々に加筆します・・・すみません・・・)
では、どうやって出芽的な分裂方法を取っているのかというと、分子メカニズムはあまりよくわかっていないと。
自由生活な細菌では、12個のessential proteinが、divisome(細胞分裂に関わるタンパク質複合体)を形成することが知られていて、FtsZが主要タンパク。
しかし、ゲノム解析によると、今回のすべての株でftsz遺伝子が”ない”(Fig. 3a)。ftse, k遺伝子は全部のPlanctomycetesで見られたが、ftsi, wはいくつかの種のみでしか見られない。つまりは、I, WはPlanctomycetesの分裂に必須ではないだろう、ということまでは予測できるようです。
ペプチドグリカン(細胞壁構成成分)を持っているにも関わらず、既知の合成経路遺伝子を持っていないグループがいたりと、謎は深まるばかり・・・
やつらはどうやってやつら自身の形を作っているのか・・・???
ポリケチドおよび非リボソームペプチド、ならびにテルペン、バクテリオシン、エクトイン、ラダーランなどの生産に関与すると予測された二次代謝産物の遺伝子などなどを
クラスター(点と線で繋いだもの)で見てみると、
Planctomycetesのものは他の細菌とは全然違う遺伝子配列の相同性クラスターを形成していた(Fig. S45の色付きドット。他の細菌は黒色ドット)
265のクラスター、628個のシングルトンのうち、それぞれ6割弱がPlanctomycetes由来・・・。それだけ変で、他の細菌グループとは全然違うみたい。
Fig. S46は、この巨大なゲノムの中にある1つの遺伝子で5kbp以上の遺伝子のカウント数を表しています。
つまり、アミノ酸ベースで1700アミノ酸とか、あるいはそれ以上・・・。
この系統樹には、他のグループにもある、"giant gene"のカウントもありますが、
やはり巨大なゲノムサイズのグループ(ActinobacteriaとかMyxococcalesとか)には少なからずあるんですね。
かなり触りの触りだけをざざっと書きましたが、
年内はもう少し加筆するかもしれません。
でも、魅力的なグループだというのは分かっていただけたかなと。
400株くらい海とか湖から分離してきたんですが、
Planctomycetesはまだ一度もお目にかかってません…
やからこそ、これだけ分離して調べた論文が一番好きになったのかも。
論文のmethodに培地情報載ってたので、
より希釈して散布するとか、
ビタミン、微量金属、Nアセチルグルコサミン入れてみるか…
ではでは
今日はこの辺で。
終わり