フラスコを振る

某大で研究やってる人の日記です。科学や(自分の専門の)生物をもっと楽しんでもらいたい。Twitterは@nkjmu。

学振申請に関する経験談

こんにちは、nkjmyです。

 

今年も残すところあとX日(年内にちゃんと投稿するぞという意思)ですね。

 12/31追記:結局最終日になってしまった・・・

 

先日、Twitterをみていたら、学振(日本学術振興会特別研究員)の申請に関して、

ご自身の経験を基にしたアドバイスブログというのが紹介されていました。

 

確かにネットを漁れば、色々と経験談は出て来ます。

 

そのブログには、

DC1, DC2, PDに全部応募した経験がある人はそこそこ少ないのでは?

みたいに書かれており、

 

「ん?じゃあ自分も当てはまるやん」ということで

(そして自分の経験もまた違うケース事例として紹介できそうで)

何かの参考になればと、覚えている範囲で書き起こしておこうと思いました。

 

 

とりあえず、学振の特別研究員がなんなのか、DCやとかPDがなんなのかは、

ここでは割愛しましょう。

(こちら:特別研究員|日本学術振興会

 

 

自分が経験した申請・結果

  • DC1 農学・水圏生命科学:不採用C (Tスコアは2.5くらいやったはず)
  • DC2 農学・水圏生命科学:面接→採用 (採用者のスコアは不明・・・)
  • PD (1回目) 生物学・生態環境:不採用C (将来性3.00/実績2.17/計画2.67/総合2.50/Tスコア2.685)  
  • PD (2回目) 生物学・生態環境:面接免除採用 (スコア不明)

 

DC1, DC2, PDを経験かつ、不採用も面接も面接免除も経験しているというので、

「珍しくね?」というアレです。

 ちなみに言うまでもないですが、不採用Cとは、「不採用者の中で下位50%」です。

箸にも棒にもry・・・。

 

DC1の頃

つまりM1〜M2の春にかけての申請。

 

私は、学部→修士で大学もラボも変えたので、M1から新しい研究がスタートしたわけやが、 当時

  • 学会発表できるものはない
  • 卒論のデータは(機械故障などにより)万全に整わなかったのですぐには論文化できない
  • 修士からの仕事では論文は間に合わない
  • 表彰されたり、なんか小さいものでも助成金を採ったりというのもない

 という状態でしたので、申請書の「業績欄」は

 

 

該当なし

 

 

で提出。(何故なのかはわかりませんが審査結果の業績スコアが2.00点/5点満点だったのは鮮明に覚えてます。ま、M2なりたてやからか??)

 

研究計画はスコアで3をちょっと超えたくらい、将来性が3にちょっと足りないぐらいだったように記憶している。

 

今読み返しての反省点

  • 図が少ない全体を通して1つのみでした。どういう遺伝子を対象にするとか、どういう実験するのかとか、研究の流れとか、そりゃ初めての人が読んでもわかりにくいわ・・・。
  • (3)の研究の特色・独創的な点が埋まってない:現在までの研究やこれからの研究の部分は比較的、「〜について記述してください」を守られていたが*1
    特色や独創性がきっちり埋まってへんのは「何がすごいのか・面白いのか」を伝えきれてへんという証・・・。

  • 研究内容→(具体的な)方法がフワッとしてるフワッとしてるという表現自体がフワッとしているが、「〜だから〜をすると〜のようになりそう。そしてそれを示すと〜の結果が得られる」という流れが見えづらい。
    やることは書いているが、「なんでそれをするん?」「できひんかったら?」というような審査員がきになる情報が少なすぎる。

・・・反省・・・これくらいでいいですか・・・(笑)

 

まぁとりあえず業績がないならポテンシャル見せてみろよ!DCってそんなもんやろ!という可能性の芽(あるのかは知らんが、そんな感じな気もする)さえ、自分ではフラグ回収できていませんでした。そりゃ落ちる。

 

DC2の頃

これはD1の春に申請を出すので、修士課程全体でどのくらい成長したかが見せ所になるわけですね。 

 

DC1からの成長点

  • 業績欄が書けるように!: 国際学会、国内学会でのポスター発表がそれぞれ1件。国際学会では優秀ポスター賞をいただけた。所属していた(当時副代表)学生団体が、大学の総長賞を取った。
    原著論文は無かったが、多分国際学会のポスター賞がでかい(と思う)
  • 図が増えた:背景知識や実験の概略図、作業仮説を示したものなど。各項目に1つ以上は入れてあった。(しかし、絵は下手くそなので修行は必要)
  • 太文字強調など、どこを読んで欲しいかのメリハリ:当時はカラー申請ができたので、赤・黒・太字をDC1の時より統一的な使い方で書けたはず。

 

面接のあれこれ(準備)

  • 形式はおそらく今でも当時でも同じはず。4分の発表と6分の質問かな。1枚のスライドで伝えられることは1個のメッセージだと思う。
  • でも一度に完成されたものをドンと出すと情報量が多い気がしたので、(アニメーションは使わず)1枚を分解して数枚にし、徐々に文字やらが埋まるようにした。(アニメーションは動かなくなると大変なので)
  • 背景的な説明が全体の半分くらいかけて、そのあとに作業仮説自分の研究の位置付けを述べた。手法については細かいので、「〜によって〜を明らかにする」くらいの簡単な表現だけに。
  • ppt的には23ページあるが、実際の(完成された)絵の数としては7、8ページ。やはり4分なので(どんなに簡単な絵でも)1枚30秒下回ると頭が追いつかへんかな・・・?
  • 発表練習と想定質問対応はラボの人の協力も得て5回くらいやった。自分1人ではさらに倍以上練習した。

 

面接のあれこれ(本番)

  • 「コ」の字型に審査員の先生たちが座っていて、6人とか8人とかそれくらいの人が部屋にいたと思う。
  • 発表時間は「〜以上です」といってから(感覚的に)10秒そこそこでベルが鳴ったのでかなり正確な配分になったはず。オーバーするのは最悪
  • 最初に手を挙げてくださった先生に「とても面白い作業仮説だと思います」の入りから、少し対象の遺伝子に関する質問が来た。
    受かったから何とでも言えるのでアレやけど、この瞬間に内心、かなり採用に自信を持てた。
  • 詳細にどんな質問が来たかは覚えてないのはあるが、数秒考えて答えられるものがあと2、3個あったくらい。ベルが鳴る前に「もう質問がなさそうならこれで終了です」と司会の方が進行していた。
    採用に自信を持てていたが、早く終わるのはどう転ぶのか若干不安になった。

 

これは面接だろうが書類だろうが言えることだと思いますが、先生から

野山を駆け巡り木や昆虫を追いかけている先生が審査するかもしれないので、一目でわかりやすいもの(ワード・仮説・図など)を作らないといけない

と言われていました。出している区分が水圏生命科学とはいえ、そもそも微生物学をちゃんと知らないとか、水圏じゃなくて陸域、森林系の方かもしれないし、

遺伝子がなんたらで〜〜というのではなく、ゴリゴリのフィールドワーカーかもしれないので、そこらへんをどのくらい綺麗にまとめるか、噛み砕くか、想像できるかが問われたのかなと。

 

 

受かってよかった。

 

PD(1回目)の頃

もう一度、審査結果を振り返ると・・・

不採用C (将来性3.00/実績2.17/計画2.67/総合2.50/Tスコア2.685)  

でした。

  • 実績がDC1の時のようにとにかく低い:これはD3時点、今後ポスドクになっていく上で戦える業績ではなかった(と思う)
    (参考)
    原著論文:筆頭1報・共著3報・専門外のミニレポートで筆頭1、共著1。
    学会発表:国際ポスター1・国際口頭2・国内ポスター5・国内口頭1
    受賞:上記の国際学会ポスター賞
    教育経験:TAやSSHの高校における課題発表会の審査員で2件
    獲得研究費など:DC2の研究奨励金・笹川科学研究助成・学生支援機構の奨学金返還免除(半額)・研究科とか研究所の助成金2件

といった具合。筆頭と言っても、Genome Announcement (現在はMicrobiology Resource Announcements)なので、まともな意味での1報にはカウントできんかなと。

 

「1年目での採用は結構厳しいよー」といった上の方々からの(慰めの?)声も聞いたが、

採用されてる人はされてるし、何より、また不採用Cということで、ちょっと凹んだ。

 

  • 将来性が「普通」、計画は「普通くらい」:業績がないのはわかっていたので、それなら研究内容で!と思ってた分、むしろこっちの3点弱の方がダメージでかい。
    DC2の時のように、図を入れ、強調のメリハリを考え、実験項目を論理的かつ丁寧に説明したつもりやったが・・・。得られてるデータと作業仮説もしっかり立ててたし。

 

どこがマイナスあるいは評価につながらなかったのか

  • (多分) 博士研究の継続感が強すぎた:思い当たるとすればここ。PDの申請は原則的に博士を取得した機関(大学)とは別の研究機関に移る必要があります。そして募集要項にあるように

学位取得後間もない若手研究者が全く環境の異なる状況において、(中略)自由な発想と幅広い視野を身に付けながら独創的な研究者として成長していくことは、特に新しい学問や学 際領域の開拓には極めて有効かつ緊要であるため、特別研究員-PDは、博士課程での研究の単なる継続ではなく、研究環境を変えて、新たな研究課題に挑戦することを求めております 

全く新しい研究課題を0からスタートせよということではないにしても、

「博士研究で〜が明らかになっており、〜が課題である」→「それを解決したい」

というようなどストレートな切り口では評価されないやろうと。

 

自分の申請書を見直してみると、

  • とある種で見られた面白い現象は(他の分類群や環境中でも)一般化できるのか
  • (博士研究で使った手法を)使ってそれらを明らかにします

という部分が全体の半分以上を占めていそうに読めました。

 5つほど挙げた3年間の中でやる項目のうち本当に新しいことにチャレンジしていそうなのが1、2項目というのでは、博士研究の単なる継続に見えるかなと。

 

それにも関連し、申請書項目の「受け入れ研究室の選定理由」というのが弱くなったのかも・・・。

 

PDはDCとは各項目で書くべき分量が代わり、上記のようなDCにはない項目もあるので、

 

今までこんな研究していました

→今はこんなに面白いことを考えてます

→それは博士研究からこんなに発展させた新たなチャレンジです

→それはこの受け入れ研究室だからこそできます

(→だから採用してください)

 

といったようなロジックが伝わるかというところが、将来性・研究計画(・総合評価)のポイント上昇につながるのだろうということで、2回目の申請に続きます。

 

PD(2回目)の頃(今年)

1回目から変えた・変わった点

  • 申請書をとにかく色んな人に見てもらった:先輩や先生には見せていたが、分野外の人には、DCの頃、隣のラボの同期にちょっと見せたくらいで、久々に手当たり次第渡してコメントをもらった。
    ・メイン学会の同学年周辺の友人2名
    ・隣のラボの後輩
    ・受け入れ先のボス

    メイン学会の2人は、微生物生態学のおよそ知識は共有できるが、もちろん私のメインテーマに関する知識は薄い。
    隣のラボの後輩は、生物学(遺伝学とか分子生物学とか)の知識は共有できるが、微生物学も含めた私のメインテーマの知識は薄い。

 

といったことから、DCの頃、先生に言われた、(野山を駆け巡って~~の話)「全然分野の違う審査員が読んでわかるかどうか」を今一度振り返ろうという作戦(?)。

 

受け入れ先のボスと打ち合わせ・擦り合わせ(?)するのはまぁ、当然。

やりたい内容がやれそうかどうかというのもそうやけども、上記の「選定理由」の項目内でうまくそのラボの強みを活かす、強調する書き方になっているかということの方がコメントをもらう中で大切やなと思った。
(今回に限らへんが、だいたい最終提出版はver5, 6あたりで出しているのでそれくらいのブラッシュアップは必要かも?)

 

  • 研究項目は今までやってへん手法やアプローチを増やした:基本、私は「培養株を用いた実験」を卒論の時からやってきたが、(受け入れラボの強みを活かすという点ももちろんあり)環境サンプル、つまりメタゲノムを作業仮説の解明に向けて使ってみようという申請にした。
    (もちろん培養実験もするが、その中身でも博士研究ではやってへんこと、アプローチを含めて書いた)

 

3年間で(細かく分けて書くと)6項目をやることになっていて、そのうち5項目は博士研究ではやってへん手法を含んでいる。

 

  • 業績が単純に増えた
    (1回目と2回目の比較)
    原著論文:筆頭1報(3報)・共著3報(6報)・専門外のミニレポートで筆頭1、共著1。
    学会発表:国際ポスター1(+共著で1)・国際口頭2・国内ポスター5(増えたけど書いた数はそのまま)・国内口頭1
    受賞:上記の国際学会優秀ポスター賞、国内学会での優秀ポスター賞
    教育経験:TAやSSHの高校における課題発表会の審査員で2件(複数年度の旨を記述)
    獲得研究費など:DC2の研究奨励金・笹川科学研究助成・学生支援機構の奨学金返還免除(半額)・研究科とか研究所の助成金2件(3件)・国内学会誌への寄稿(優秀ポスター賞関連)

 上記の通り、採用内定者はそのポイントが開示されんので、今回の業績点がどの程度なのかはわかりません。

 

以上3つの点に関しては1回目の申請に比べて進歩したであろう点です。

作業仮説自体はほとんど変えていない(大元のネタが変わったわけではない)にも関わらず、

不採用C→面接免除内定になったということで、自己分析もあながち間違ってへんのでしょう。

 

 

不採用Cって結構ダメージがくるので、人によっては、業績や申請内容、それにかける労力の関係から諦めてしまいたくなる人もいるかもしれません。

あるいは、自分のラボの先輩がそうやって落ち込んでるのを見たら、「あの人であれなら自分は・・・」と思ってしまうかも。

しかし、書かないことには採用になることは絶対にないので、チャレンジする精神は大切やと思います。

 

自分の研究的な意味でもチャンスが転がり込んでくるかもしれませんし、

あるいはそもそも学振の予算的な意味での枠が突発的によくなるかもしれません。

そもそも、6人選ばれる審査員の中に、たまたま自分の分野に明るい人が混じっているかもしれません。

(これは本来なら公平に申請書は読まれるべきで、そのような前提で審査されているはずですが、10人20人あるいはそれ以上の数の申請書の中に、すんなりと理解できるものがあれば、”きっちり読んでくれる”可能性を高めることは完全には否定できひんかなと。個人の意見です。)

 

ちなみに枠的な意味でいうと、今年の申請、採用に関しては、

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生物学の領域に関してはこのようになっています。30年度の採用者(最終)が229→39であることを考えると、面接候補が残っている中でのこの数(205→39だけでも19%くらい)は、幸運だったはずです。

 

Cからの逆転だって、1年あればあるかもしれんのやし!というメッセージが伝わればと。

 

もちろん、本来の研究を頑張るのは言うまでもないけど。(私もですね、頑張ります)

 

 

また何か思い出したら追記するかもしれません。

 

最後に、

 

 

 

 

 

 

この文章では語調が統一されていませんが申請書では統一しような!

 

 

 

出来上がった文章全体を眺めるのは重要!

 

終わり。

 

*1:例えば学振申請書の書き方とコツDC/PD獲得を目指す若者へ (KS科学一般書) を執筆されている大上さんも(公開されているslide shareなどでも)仰っていますが、申請書で言われていることをちゃんと書くことは非常に重要というか基本中の基本だと思います。