真核生物の高次分類はムズカシイと思う
こんにちは、nkjmyです。
昨夜、ツイッターで仲良く(リアルでもお会いしたことはありますが)させていただいている、小谷先生から、下記のようなツイート&微生物ネタをいただきましたので、
めっちゃ簡単にではありますが、
概要を書いておこうと思います。
いただいたのが、
nkjmさん @nkjmu 解説お願いします。
— 小谷太郎 (@tarokotani) November 17, 2018
→
動物でも植物でも真菌でもない? 不思議な新種の真核生物が発見される | ニコニコニュース https://t.co/peaZWmZt2L
こういうもの。
僕は基本、細菌(たまに古細菌も関係)が専門なので、
真核生物はそれほど詳しくはないのですが、
一応、微生物学の範疇ですし、系統分類ネタは好きなので、さらっと読んでみました。
(卒論は真核生物の渦鞭毛藻とかラフィド藻というのを使っていたので完全部外者ではないのもまた事実)
さて、ポイントはいくつかあり
・Hemimastigophora というグループを見つけた・設定した(記載種としてはHemimastix kukwesjijk sp. nov.)
・動物や植物、真菌といった界には属さない
・過去100年間で10種の記録はあるが、詳しい系統的な位置は謎のままだった
・今回、採取だけではなく、飼育にも成功したため遺伝子解析を実施できた。
・界より上の上界として提唱
さて、真核生物に明るい、ちょっと分類も知ってるぞという人なら、最後の1文が気になることと思います。
通常、高校生物で習う意味での「五界説」における「界」の上を立てたみたいに読み取れてしまうと、それは違うだろうということ。
(特に?)真核生物は(細菌古細菌ではあまり聞かない気がします)、
「門」との間に上門・界・上界に相当するスーパーグループを置いています。
ただし、今回の微生物に限らず、「どこに属するのかわからない」(どこかの門に入るくらいなのかめちゃくちゃ新しいのか)グループも存在していたり、
真核生物の高次分類は、なかなか定まっていないという印象を受けます。
(5、6個のスーパーグループがあり、その中でさらに門までの間にグループが存在していたり・・・)
「真核生物 スーパーグループ」と検索すると、色々情報が出て、
変遷の総説なども見つかりますので、詳しくはそちらを。
つまり、五界説的な界で全く新しい上界の微生物が見つかったというより、
どこかしらのスーパーグループに属するもの、あるいは新しくスーパーグループに入りそうなくらい(つまりは上記の所属不明な奴ら的な)、
系統的にこれまでの真核生物と離れた微生物だった
という方が和訳的には近いのではないでしょうか?(真核屋さん・・・タスケテ笑)
さて、学外からみているので、Natureの記事のアブストしか読めませんが、
(引用)
The ‘phylum’ Hemimastigophora is probably the most distinctive morphologically defined lineage that still awaits such a phylogenetic assignment.
(中略) Here we report phylogenomic analyses based on high-coverage, cultivation-independent transcriptomics that place Hemimastigophora outside of all established eukaryote supergroups.
やはり、これまでにあるスーパーグループの「外」にHemimastigophoraは位置すると主張されていますね。
(つまり新スーパーグループ相当かな?)
続いて
(引用)
They instead comprise an independent supra-kingdom-level lineage that most likely forms a sister clade to the ‘Diaphoretickes’ half of eukaryote diversity (that is, the ‘stramenopiles, alveolates and Rhizaria’ supergroup (Sar), Archaeplastida and Cryptista, as well as other major groups).
ここでsupra-kigdom(上界)という文言が出てきているのが、
少しややこしくさせているような気がします(こういう書き振りの文化があるのかもしれません・・・)
これまで知られている、Diaphoretickesが姉妹群になるよう。
そもそもDiaphoretickes自体、スーパーグループをまとめたようなさらに上位の括り方のはず・・・。
(SAR、つまりストラメノパイル・アルベオラータ・リザリアやアーケプラスチダなどがスーパーグループになるのかと)
Diaphoretickesのようなかなり大きなくくりには、ExcavataやAmorphea (Unikonta?)といったものがありますが、そこに入るのではなく、あくまで、
Diaphoretickesの姉妹群(DiaphoretickesとHemimastigophoraが共通祖先を持ち、分岐する)。
運良く同じサンプルから2種も採取ができ、上記の通り、継代飼育もできているようなので、今後の解析が楽しみですね。
論文DLできて読めたら、加筆の可能性もありますが、とりあえずはこれくらいで。
(あるいは情報提供があれば笑)
終わり