フラスコを振りながら

某大の博士課程の院生の日記です。科学や(自分の専門の)生物をもっと楽しんでもらいたい。

またまた気晴らしに読んだ論文のあらすじを書いてみる

こんにちは、nkjmyです。

 

自分の博士論文や投稿論文に関わる論文読みや執筆の気晴らしに論文を読むという

学問漬けな日々ですが(もちろん、頭を休める気晴らしもやってる)

 

昨日見つけた面白い成果についてまたまたメモ書き程度にここに投下しておこうかなと思います。

 

ちなみに前回は、「内向きのH+輸送」という生命のエネルギー形成の根幹に関わるかもしれない(関わらないかもしれない)ネタでしたね。

論文読んだ感想を書く - フラスコを振りながら

 

前回同様、高校・大学の生物をほぼ知らなくても、そこそこわかる、面白さを実感できる感じに仕上げたいです。

 

 

 さて、本日ご紹介するのは、こちら

 

Recovery of nearly 8,000 metagenome-assembled genomes substantially expands the tree of life | Nature Microbiology

一応、オープンアクセスなので、誰でも読めます。

 

さて、前回同様、これを味わうために前提知識のおさらいをば。

 

ゲノム:全遺伝情報。ある生物が持つDNA全体と思ってもらえれば。A, T, G, Cの4種類がずらりと結合したDNAによって、いろんな遺伝子がいろんな機能を持つが、ヒトなら30億塩基対(文字)くらいある。細菌なら数百万くらい。

生命の設計図とも言われる。

どんな生き物がどんな遺伝子を持っているとか、どういう代謝ができる(何を食べ何を作るかetc)のかとか、進化的にどう言う風に今に至ったのかとかいろいろ分かる。

 

メタゲノム:とある環境中に存在する全遺伝情報。たとえば海水を100L採ってきて(そこにはたくさんの微生物がいる)、そこにあるゲノム全部。土でもいいし、う●こでもいいし、昆虫とか魚の腸内でもいい。

その環境中になにがどれくらいあるのか、ざっっと調べることができる。環境評価の1つとしても利用可能。

 

門(phylum):通常、分類を行う際の最も広いくくりの1つ。この上にsuper phylumとかドメインとかあるけど、前者は(比較的近い・似通ってる)phylumの集まり、後者は細菌・古細菌・真核生物の3つで、ほぼ自明なので敢えて分類として書かれない・・・感

例えば我々は脊索動物門、エビカニ・昆虫・クモは節足動物、イカタコ・巻貝などは軟体動物・・・という感じのでかいくくりと思っていただければわかりやすいかなと。 

 

 

細菌と古細菌は違う

真核生物は我々動物も植物も、カビ・キノコも全部ここ

 

くらいで今はOKです。

 

 

さて、近年の遺伝子解析技術の発達により、とある生物のゲノムを解読したり、とある環境のメタゲノムをしたりと言うのが簡単にできるようになってきました。

 

 

どんくらい簡単かというと、

例えばヒト。ヒトゲノムは2003年に初めて(1人分の)解読が終わりましたが、

当時は10年以上、1000億円以上もの資金を各国が分担してようやくできました。

 

 

さて、2017年・・・

 

初期投資やら解析手法のなんやらがいろいろ異なるとはいえ、

だいたい、

20時間前後で、十数人分のヒトゲノムを読むことが可能という機械が開発され(販売され)ています。(Nova seqスペックシート illumina社より)

 

時代は、1000ドルゲノム、100ドルゲノムへと近づいているとさえ言われているのです。

 

あるいは、

こういう、USBメモリサイズにも関わらず、(さすがにヒトゲノムは無理ですが)

遺伝子を解析できる装置もあったり。

詳細を表示 | オックスフォード・ナノポア・テクノロジーズ

 

というくらい簡単。

 

 

相変わらず前置きが長くなりましたが、論文の図などで、いろんな方が簡単に面白さを味わえるのがめっちゃ多いと言うわけではないので、ブログ分量のカサ増しです

 

さて、そんなこんなで世界中の研究者がこぞって、ゲノム・メタゲノム解析をしてきたわけです。

 

しかし、1サンプルあたり、数百万、数千万、数億塩基(文字)の遺伝情報が得られ、

その中に数千、数万の遺伝子が見つかるわけです。

その全てを調べきるなんて到底無理!

 

つまりデータが余っている・埋もれている状態。

 

そこで

この論文。1500以上のメタゲノムデータを再解析というか、用いることで、8000近い細菌や古細菌のゲノムを再構成したというもの。

 

メタゲノムは、その環境にいる生物の遺伝子をばばっと読みます。その中には何百、何千種類という細菌たちがいたわけで、

断片化されたデータであっても、「のりしろ」ではないですけど、オーバーラップする部分を繋いでいき、メタゲノム情報からゲノム情報を得たと

 

 

ではなぜ、そこまでして、いろんな細菌・古細菌のゲノムを得たいのか。

 

それは

 

 

環境中にいる細菌・古細菌のほとんどすべてが

培養できない

 

ためです

培養とは、(人為的に)実験室などで増やすことで、

実験室で扱えないということは、どういう機能を持ってるとか、どういう環境が好きとか嫌いとか、わからないということ。

 

なので、メタゲノムに頼るしかないと。

 

 

そして再構成されたゲノムをみることで、これまで知られている情報などと比較し、

培養されたことのないものでも「遺伝情報」として扱えるようにしたわけです

 

 

さて、現在細菌には30数個の「門」が正式に認められていますが、

 

この時の記事にも書きましたが

微生物の魅力をどう伝えるか - フラスコを振りながら

候補としてはさらに30数個が「こんなんどうやろか」と遺伝情報から提案されています。

(これは2016年ごろからCPR、Candidate phyla radiationという巨大な門のまとまりが見つかるようになっています)

 

そして今回

 

細菌に17個の門が提案されました(図2の系統樹に赤色で示されています)

CPRという門の塊の内部ではなく、今まで知られていたような門の近くにも候補がポツリポツリ。

 

そして古細菌、これは正式なのは3つの門だけだと思いますが、提案されているのはさらに10個ちょっと。

 

今回新たに3つの門が提案されました。(図3)

 

今まで埋もれていたデータからでも分類の最上位である「門」が(もちろんまだ正式ではないけど)ぼろぼろと見つかるというのは面白いですね。

 

動物と呼ばれるグループには門がこれまた30個ちょっとありますが、

1983年に胴甲動物という門が見つかって以来、新しい門は無いようです。

(ぱっと探した範囲なので、より新しい情報があればいただけると幸いです)

 

今、細菌・古細菌の種数としては1万5千とかそれくらいで動物の100分の1くらいですが、

 

門の多様性としては細菌・古細菌も捨てた「門」(もん)じゃ無いですよね笑

 

 

・・・・・・・・・

 

 

はい、今日はこの辺で

 

 

終わり