フラスコを振りながら

某大の博士課程の院生の日記です。科学や(自分の専門の)生物をもっと楽しんでもらいたい。

「常識はずれの細菌」に関しての解説書いてみる

こんにちは、nkjmyです。

今日はですね、つい最近出た、ヤフーニュースにもトピックが上がっていた細菌に関する研究結果についての、簡単な解説を書いてみます。

 

解説といってもあくまで自分用のメモ的な立ち位置で、

某短文をつぶやくSNSや顔本で何人かの人から「これって!!?」みたいな反応をもらったため、記事よりも突っ込んで知ってもらう用です。

 

論文をざっくりとしか読んでいませんので、ガチ勢の方には物足りないかなと。

 

 

紹介する記事は、

こちら。

 

この記事は、各方面で?話題になり、

岩からエネルギー?謎の微生物=初期生命の手掛かりに-海洋機構など:時事ドットコム

 

新種の微生物発見…極めて過酷な環境で暮らす : 科学・IT : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

https://mainichi.jp/articles/20170724/dde/041/040/038000c (タイトル変換されなかった)

 

 

どれも同じ結果に対する結果に対する記事なのですが、いずれにせよ「すごい細菌が見つかった」「いろんな遺伝子をもっていない」「どうやってエネルギーを得ているのか?岩からか?」といったことは伝わったかなと。

 

ある程度専門がわかる方は、プレスリリースをご覧いただくといいかもしれません。

【プレスリリース】地下深部の超極限的な環境に「常識外れな微生物群」を発見 ~マントル岩石と生命との関わりや地球初期の生命進化の謎の解明に前進~ | 日本の研究.com

 

もう、これがあれば、ここで書く必要なくね?と思わなくもないが。

 

最初の記事にあるような、「酸素を使った呼吸」というのは少し誤解されるというか、

酸素を使わない呼吸もある(嫌気呼吸)ので、その書き方だと、嫌気呼吸の遺伝子はあったのか?とならないくもないが、

 

実際は、エネルギー合成全般に関して遺伝子が抜け落ちているという方が近いだろうと。(プレスリリースでは、「エネルギー呼吸をつかさどる遺伝子群は一切存在せず、これまでに知られているあらゆる呼吸反応を行っていない可能性が示唆されました」とあります)

 

呼吸は(本質的には?)水素イオンを膜外に排出し、水素イオンの勾配をつくって、

受動的に水素イオンが膜内に入って来る際にエネルギーを得るものといえるかなと(電子の動きや、その受容体が還元され〜〜〜とか色々あるけど)

 

その水素イオンが膜内に入ってくる通り道が、エネルギー(ATP)をつくるATP合成酵素というものなのですが、この遺伝子を持たないやつもいたというのが驚くべきポイントでしょう。

持っている細菌であってもなぜか古細菌型のATP合成酵素の遺伝子ということで

 

 

ど、どうやって手に入れた・・・??

となるわけです。(ちなみに周辺には古細菌はおらず、群集の99%が細菌であるとプレスリリースには書かれていました)

 

 

エネルギーを作るための遺伝子がない・・・そんなことがありえるのかというと、

昆虫に共生している細菌などでは一部そういったものが知られていたようです。

 

が、

 

これはあくまで地下水由来の水の中にある遺伝子を全て調べ、そこに生息する細菌のゲノムを再構築したというもの。つまり、共生・寄生の類ではないのでは?となり、そうなると、「常識はずれ」となるでしょう。

 

 

今回発見されたOD1というグループは論文によると、深部の地下水由来の水ではかなりの割合(相対比)で生息していることが示唆され(なんの遺伝子の割合かにもよりますが、2割弱から4割強?)、群集の中心的な数にもかかわらず、エネルギーをどうやって得ているのかよくわからないと。

 

さて、このOD1はCPR(Candidate Phyla Radiation)というグループの1つといわれており、このCPRは2015年に提唱されたとてつもなく巨大な細菌のグループです。

 

http://www.nature.com/nature/journal/v523/n7559/fp/nature14486_ja.html?lang=ja

 

新しい系統樹では細菌が圧倒的に優勢 | Nature Microbiology | Nature Research

(これは2016年のもの)

 

こちらも地下水の研究ですが、地下水を滅菌フィルターと呼ばれる口径0.22μmで通して、それを通過した水を調べてみると、めちゃくちゃ多様だったというような論文です。

 

CPRの中に少なくとも35以上の「門」が新たに提案され、候補としては200ほどの門があるのでは?という結果です。

 

 

門です。

 

我々でいうと「脊索動物門」、エビカニ昆虫なんかは「節足動物門」。

 

このCPRのゲノムを再構築し、OD1も含む色々なグループで今回の結果のように代謝経路やエネルギー合成、細胞を形作るための遺伝子などを持っているかどうか解析しているのですが、

 

CPRでは

 

軒並み、ぼろぼろと遺伝子を持っていない

ということがわかっています。

 

今回のOD1もDNAやアミノ酸、脂質や脂肪酸などをつくるための遺伝子がなく、

自分で自分の体を作ることすらできなさそうな感じがしますが、

 

CPR群集のやつらはそういうのばっかりなのです。

 

今回の結果を見ていると、同じOD1グループに入る別種?のゲノムをみてみると、

OD1と呼べるグループ全体では「誰かが持っている」機能もあるというのが論文の表から見えたことです。

 

さらにOD1ですらない、別の門の細菌(この地下水に多く生息するやつ)なら持っているとなっている機能もあるので、共生ではないにしろ、水圏環境の群集全体として、持ちつ持たれつになってたりするんかな?

 

と思わなくもないです。(普通の、ほぼフルセットで遺伝子機能を持つやつらからしたら、他者にあげるメリットは・・・?と思わなくもない。)

 

 

著作権などの関係で、グループごとの持ってる持ってないがわかる綺麗な表を出せないのがつらいですが。(ちなみに、上のURLの一番目のNatureからDLできます、アクセス権のある方は。)

 

つまり、今回のOD1は確かに常識はずれ。しかしそれが本当にマイナーなぽっと出の変な細菌というわけではなく、

 

CPR群集に属するようなやつらは通常目にする、あるいはよく知られた生物では当然持っているべき遺伝子を(逆に当然のごとく?)持っていないということが改めて示されたと言えるのかなと思っています。

 

 

まぁ、そもそもpH12弱という強アルカリな環境というのもすごいけど。

(ちなみにアルカリなので周りには水素イオンが極端に薄い)

 

 

ということで数日遅れでしたが、自身の研究に近い微生物の生態に関する面白記事を紹介しました。

 

 

終わり